2016.08.26 イベント 【講演レポート】AI活用カンファレンス <ヘルスケアセッション> 転倒・転落予測システムにより現場の負荷を低減し、患者さまに寄り添う時間を増やしてゆく

営業本部 営業支援グループ

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7月29日にユーザー企業様をお招きして開催したFRONTEOローンチ記念イベント「AI活用カンファレンス」では、ヘルスケア、ビジネスインテリジェンス、マーケティング、リーガルの4分野における人工知能「KIBIT(キビット)」の活用事例を、20分間のセッションでご紹介いたしました。
この記事では、当日のセッションの内容を順次ご紹介させていただきます。
 
最初のヘルスケアセッションは、入院患者のカルテの内容を人工知能「KIBIT」が分析し、患者の転倒や転落の予兆を察知する事例についてのトークセッションです。NTT東日本関東病院で、医療安全管理室の専任医療安全管理担当者 看護長を務める中尾正寿氏にご登壇いただき、FRONTEOの武田 秀樹が進行役を務めました。

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医療安全に積極的に取り組むNTT東日本関東病院

NTT東日本関東病院(https://www.ntt-east.co.jp/kmc/)は、病床数592床、職員約1300名、看護師だけでも約700名が在籍する病院です。中尾氏は、そこで医療安全管理に専任で取り組んでいます。
「私は、看護と心理学という2つの専門領域を学んできました。看護師になった16年前にはまだ男性の看護師は珍しく、50名の同期の中で男性は私だけでした。心理学は、筑波大学大学院で学びました。心理学を学んだ看護師が医療安全管理に従事することになったのは、必然なのかなと感じています」

20160824_8.pngのサムネイル画像        NTT東日本関東病院 医療安全管理室 専任医療安全管理担当者 看護長 中尾 正寿 氏

リスクが高まる高齢者の転倒・転落

医療の安全管理、特に患者さまの転倒・転落を防止することの重要性が高まった背景について、中尾氏は次のように語ります。
「まずは患者さまの平均在院日数が、15年前は20日でしたが昨年は9.8日まで短縮されたことがあります。その結果、医療スタッフは、患者さま一人ひとりの詳細な状態を把握することが以前よりも難しくなりました。もうひとつの理由は高齢化です。例えば、この5年で90歳代の患者さまが1.5倍に増えました。来院する患者さまの平均年齢は70歳代に達しています。しかも現在では、高齢者の方でも普通に手術や抗がん剤治療といった体に大きな負担がかかる治療が行われるようになりました」
 
こうした高齢者の患者さまの場合、術後のケアにより気を遣う必要があります。普段の生活では元気でも、手術の後はフラフラして転んでしまうことがあるそうです。80歳や90歳になり転倒して骨折すると、なかなか骨はつながりません。手術がうまくいっても、その後の転倒により車椅子で帰宅するのでは、何のために手術を受けたのか分かりません。

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看護記録を取り込み、人工知能「KIBIT」で分析、抽出

こうした課題を解決すべく、NTT東日本関東病院とFRONTEOは、転倒・転落予測システムの開発に着手しました。このシステムは、電子カルテ内の患者の状態や日々の看護記録など、自由記述のテキストデータを人工知能「KIBIT」で解析し、インシデントの予兆を検知することで現場の負荷を減らすものです。
NTT東日本関東病院では、過去にも医療安全のインシデントレポートをテキスト解析してみたことがありました。当時のシステムでは、あらかじめ決められたフォーマットに決められた情報をこと細かに入力する必要があり、逆に現場の業務負担が増える結果となり、有効な知見を得るまでの解析のできないままに終わったそうです。
 
その経験を踏まえて、このたびの転倒・転落予測システムは、看護師が日々の業務の中で記入する入院患者の看護記録を参照することで、記入者の負荷を抑えることにしました。それを人工知能「KIBIT」で解析し、その中から転倒・転落リスクの高い患者さまをランクづけします。その情報を参考にして看護師が患者さまを重点的にケアすることで、転倒・転落のリスクを低減するのです。情報の更新は1日に1回で、情報はナースステーションのクライアントPCでも確認できます。
 
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16年の看護師経験を教師データとした分析で驚きの結果が

転倒・転落予測システムでは、看護記録の中からどのようにして転倒リスクの高い患者さまを抽出しているのでしょうか。最初のステップとして、中尾氏は、注意力が低下している患者さまや、見えないものが見えるといった意識障害ががある可能性の高い、せん妄状態の患者さまを抽出することに取り組みました。
「16年の看護師経験に基づきカルテを読み解くと、どのような患者さまが転びやすいのか分かります。1日の様子ですぐ分かることもありますし、2、3日の変化で認識するものもあります。そういったサンプルを私が選び出し、それを教師データにしていただきました」
 
そのデータを元に、KIBITが100名分のカルテをスコアリングしました。
「看護師が100名分のカルテを読んだとすると1日では決して終わりません。それを人工知能が短時間で特徴を見出せるものなのか、半信半疑でした。ところが、その結果には驚きました。明らかに分かりやすい患者さまだけでなく、分かりにくいと思っていた患者さままで高いスコアを示していたのです」
 
進行役の武田が、その結果について次のように話します。
「このような結果が得られたことで、看護師の方が現場で感じている暗黙知は正しいのだと実感しました。実際に示唆していただいた特徴を使って抽出すると、さらに精度が高まりました。そこで、次のステップとしてどのような特徴を抽出していくか、現場の方々と議論を進めています」

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          株式会社FRONTEO 取締役 CTO 行動情報科学研究所 所長 武田 秀樹

看護記録は暗黙知をつなぎ合わせる宝

看護記録には、実際どのように知見が記録されているのでしょうか。中尾氏が解説してくれました。
「看護師は、5人から10人ほどの患者さまを担当します。日勤の場合、8時から17時くらいまで患者さまを診ています。看護記録には、どのような情報を残すべきか、次の看護師に伝えるべきものは何なのか、熟慮して記載します。特に転びやすさであったり病態の変化であったり、次の予測や判断に有用な特徴を選びます。
引き継いだ看護師は、なぜその情報が書かれているのか、どういう意図で書かれたのかを踏まえて読んでいきます。つまり、暗黙知と暗黙知をつなぎ合わせるような作業をしているのです。そういう意味では、看護記録は、暗黙知の宝庫になっていると言えるでしょう」

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FRONTEOに対する期待と今後の展開

このような暗黙知を活用することで、現時点で人によるアセスメントと比較して約40%以上の精度で予測できるようになりました。
中尾氏は今回のプロジェクトと今後の展開について、次のように語ります。
「FRONTEOとプロジェクトを進める中で感心したことは、普段の業務で行う記録の中から暗黙知を見つけ出してくれたことです。今後開発が進めば、精度はさらに高まります。そうなれば、現場の負荷は一層下げられるはずです。そして、負荷低減で生み出された時間を患者さまのそばに寄り添う時間に費やしたいと思っています」
 
最後に、中尾氏は人工知能の活用の在り方について語ります。
「人工知能は、今までの医療になかったものです。新しいものを受け入れるのは大変ですが、FRONTEOの人工知能「KIBIT」が抽出する暗黙知自体は、もともと私どもが持っていたものです。今までカルテを見ながらやってきたことを、KIBITの示唆として受け取り、これからもっと多くのことを解決していきたいと思います。人工知能は、そういった暗黙知に気付く対話のための良きパートナーになって欲しいと思います」
 
※このセッションでご紹介した製品・ソリューションの概要は、こちらのページでご確認いただけます。